2013年12月18日水曜日

ブラックツーリズム

Kさんから唐突に、件名はもちろん時候の挨拶も他愛ない一言もない本文だけのメールが届くことはよくある。
今回も、福岡滞在中のさなかそんなメールが届いた。
ブラックツーリズムと題されたそれは、日々の記録の中の一つだと思う。

「ブラックツーリズム:歴史は、光景を観た者の心に残るかぎり、消えない。歴史から学ぶ謙虚さは、どの時代にも人々を救った。戦争の悲惨さは、経験しない若者も当時の光景を観ることで学ぶ。学んだ若者は、戦争の痛みを知って、平和を願うようになる。思い返すと、各地のブラックツーリズム現場を見てきた。長崎・広島原爆記念館、ハンセン病院、筋ジス病院、ソウル625南北戦勝記念館とテグ抗日記念館、まだ行ってないのは、ポーランドのナチ収容所、松代防空壕、福島第1原発、ハノイ地下壕。それは、自分の運命にどのように対処するかを探る旅でもあった。もちろん、各地の美しい自然も一般の人たちもすてきであった。しかし、旅で印象に残っているのは、やはり私の思想と人生観に影響を与えたブラックツーリズム観光地であった。」

3年くらい前にKさんに連れられ宮古島にあるハンセン病療養所「南静園」へ行った。
行く前日にハンセン病にまつわる歴史が書かれたぶ厚い辞書のような本を渡され、
「行って何かを感じたいならこれくらい読めるでしょう」と、試されているようでもあった。

白眼視を利用した国側の工作、生命の尊厳をも奪い取る断種、臭いものには蓋をするような隔離、
ほんの数十年前におこなわれたことにもかかわらず、そんなことも知らずにのうのうと「イマ」を生きている気になっていた自分。
社会の無情さと、自身の無知を恥じながらの訪れとなった。

しかしその場にあったものは、
書に記されていた史実から受けた印象とは異なるものだった。
元患者の人たちは優しかった。
史実は事実だが暮らしの中の一面であることも事実であった。

手と足を使って感じるそこに在るものは、自分のいたらなさを映してくれる。